社会福祉法人大阪聴覚障害者福祉会 北摂聴覚障害者センターほくほく様の働きがい創造|働きがい創造企業に学生がインタビュー#43

働きがい探求コラム 2025年5月15日

こんにちは!Pleasure Support株式会社の学生スタッフ横井です。
今回は「働きがい」をテーマに、社会福祉法人大阪聴覚障害者福祉会 北摂聴覚障害者センターほくほくセンター長 西田美和様にお話を伺いました。

北摂聴覚障害者センターほくほく様とは?

北摂聴覚障害者センターほくほく様は、就労継続支援B型事業所をしている団体です。聴覚障害者が安心して集まれる場所づくりを目指し、作業訓練を受けながら日頃の暮らしに関する情報交換や健康への不安など相談できる場となっています。
具体的にはタオル折りやバラン加工・DM発想などの下請け作業や手芸品作製などの生産活動を行っています。

今回インタビューにご協力いただいたのは・・・

今回お話を伺ったのは、北摂聴覚障害者センターほくほく センター長・西田美和様です。
西田さまは、手話との出会い、そして“福祉”の道へと進むまでには、ひとつの忘れられない体験がありました。

きっかけは、中学1年生の美術の授業。
「今日は、言葉ではなく“表現”について考えてみよう」と先生が紹介したのが、道具を使わずに想いを伝える手段――“手話”でした。

「手で話すって、すごいな」
その瞬間、西田様の心に小さな火が灯ります。
興味を持った西田様は、独学で手話を学び始め、その後は手話部や手話サークルにも所属。気づけば、手話はいつもそばにある存在になっていました。

やがて、聞こえない方々と実際にふれあう中で、「もっと深く関わっていきたい」「人の生活を支える仕事がしたい」と思うようになります。
“手話”と“介護”、どちらも自分の中で大切に育ってきたもの。それを活かせる仕事として、福祉の道を選んだのです。

コミュニケーションがつなぐ、ほくほくの居場所づくり

耳が聞こえないという理由だけで、地域の中で孤立したり、時には差別的な扱いを受けることも少なくありません。
でも、ほくほくに来れば違います。

ここでは、手話が「特別なもの」ではなく、「当たり前の言語」として使われています。
手話での会話が自然に交わされる空間には、安心感と温かさがあふれていて、初めて訪れた方でも「自分の居場所がここにある」と感じてもらえるはずです。

耳の聞こえない方も、そうでない方も、誰もがありのままの自分でいられる——
そんな“共に生きる”場が、「ほくほく」にはあります。

通訳者ではなく代弁者

西田様が大切にしている事は、「聞こえない人の“代弁者”である」という意識です。
けれど、その想いに辿り着くまでには、長い時間がかかったといいます。

「以前は、自分は“通訳者”なんだと思っていました。聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐ、ただの“橋渡し役”だと。情報を伝えるだけで、そこに感情までは入り込んでいなかったんです」

けれど、聞こえない人と向き合い続ける中で、西田様の中に大きな変化が訪れます。
彼らが抱える苦しみ、喜び、戸惑い、そして、伝えたいのに伝わらなかった悔しさ――そのすべてを“代弁”することこそが、自分の本当の役割なのではないかと気づいたのです。

「代弁者とは、単に“言葉”を訳す存在ではありません。聞こえない人がこれまで経験してきた感情のひだや、心の声までも伝える存在。聞こえる人と、聞こえない人の間に“共通の理解”を生み出すための、架け橋になることです」

西田様は、自身が“聞こえる立場”であることを自覚しつつ、常に“聞こえない人の目線”で物事を見るよう努めていると語ります。
どんな小さな場面でも、誰かの感情を、思いを、まっすぐに届けるために――今日も彼女は、ひとつひとつの言葉に心を込めて向き合っています。

今後の展望

今後の展望について尋ねると、

聞こえない人と言えば、「ほくほく」

北摂地域では、いまや「聞こえない」というキーワードと「ほくほく」の名前が、自然と結びつくようになってきました。
それは、これまでの取り組みの積み重ねによって、地域の方々に“聞こえない”ということへの理解や関心が少しずつ広がってきた証でもあります。

しかし、ほくほくの歩みは、ここで終わりではなく、「聞こえないこと」を理由に誰かが孤立してしまう社会ではなく、誰もが安心して暮らせる地域をもっと広く、もっと遠くへと届けていくこと――
それが、ほくほくの次なる使命だと感じているようです。

「聞こえない」ことは、不便じゃない。手話通訳が“あたりまえ”の社会へ

センターでの活動だけでなく、個人としても手話通訳の仕事を手がけています。
その中で強く感じているのが、「手話通訳者の数が圧倒的に足りていない」という現実です。

「少し学んだからといって、すぐに手話通訳ができるわけではありません。英語の授業を受けただけで通訳ができないのと同じで、“言語”としての手話をしっかりと習得し、通訳という高いレベルで使いこなすには、相当な時間と努力が必要なんです」

だからこそ、西田様は願います。
手話通訳者がもっともっと増えてほしい。
それは単に“数”の問題ではなく、「聞こえない人が、より豊かに生きる権利」につながるからです。

さらに、西田様はテレビなどのメディアでも手話通訳を担当することがあります。
「メディア通訳は、通常の通訳よりもさらに高いスキルが求められる。対応できる人が少ないのが現状です」と話します。
西田様が目指すのは、海外のように“当たり前”に手話通訳が存在する社会。

「“聞こえない”ことが“不便”なんじゃないんです。手話通訳があれば、聞こえない人も聞こえる人と同じ情報を得られる。それが本来の“あたりまえ”だと思うんです」

インタビューをした感想

今回のインタビューを通して、これまで気づかなかった多くのことに出会うことができました。
私たちは「聞こえる」という前提で日々のコミュニケーションを当たり前のように行っていますが、
それでも人と心を通わせることは、決して簡単なことではありません。

ましてや、「耳が聞こえないこと」は見た目では分かりづらく、周囲の人がそのことに気づかず、無意識のうちに壁をつくってしまう――。その現実に、私は大きな驚きと、深い気づきを得ました。

「当たり前」を「当たり前にできる社会」をつくることの難しさ。
そして、私たちはその「当たり前」にどれほど無自覚に生きているのかということ。
だからこそ、見過ごされがちな“当たり前”に目を向け、それを大切にしていきたい。そう強く感じる機会となりました。

そして何より、インタビューで出会った皆さんのエネルギーと明るさに、私自身が力をもらいました。
前向きに生きる姿に背中を押され、「私ももっと頑張ろう」と、自然と思えたのです。

この出会いが、これからの私自身の在り方や、社会との関わり方を見つめ直すきっかけになったことを、心から感謝しています。

会社概要|北摂聴覚障害者センターほくほく様

住所:吹田市岸部中3-13-4
TEL:06-6387-2015
HP: https://www.daichofuku.or.jp/facilities/hokuhoku/

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