教科の枠を外し、「わくわく・じっくり・ひろげる」から始まる主体的な学びー泉南中学校の探究学習

こんにちは!Pleasure Support株式会社 学生スタッフの赤星と申します。
この度、泉南中学校 人権教育担当 藤田 瑞樹 先生に探究学習についてインタビューを行いました。
この記事を通して、皆さまが新たな気づきや価値観を得ることができれば幸いです。

インタビューにご協力いただいた 藤田 瑞樹 先生

■ 現在の探究活動について

泉南中学校では2024年度より探究学習を本格的にスタートされました。
「自分たちの好き・得意・興味で学校→地域→社会を変える!」をテーマに、生徒自身が課題ややりたいことを見つけ、地域を巻き込みながら学びを深めています。

今年度は、探究本来の「主体性」をより発揮できる形にするため、思い切って教科の枠を外した探究を行いました。
生徒はまず自分の「好きなこと・得意なこと」を起点にテーマを設定し、それを言語化して企画として提出。教員との面談を経てグループが編成され、地域や学校とのつながりを持ちながら学びを深めていく流れになっています。

こうした方向性の背景には、昨年度の取り組みがあります。
同校では教科センター方式という、大学のように教科ごとに教室を移動するスタイルを採用していますが、生徒からは「先生は移動しなくて楽そう」「私たちばかりが動いてずるい」
といった声が上がっていました。これをきっかけに、”教科センター方式の意義が生徒に伝わっていない”ことに気づき、昨年度は 教科×探究 を組み合わせた学習を実施したのです。

ただ、その結果、どうしても座学中心になり、個人・学内で完結する探究に偏ってしまったため、今年は探究を深める3つの柱「わくわく・じっくり・ひろげる」を設定し、より主体的・外交的な探究へと改善したそうです。

■ 探究授業の目的・意義

泉南中学校の探究授業は、まず 「地域とのつながり」と「将来の夢を描く力」 を育てることを大前提としています。
同校が探究を導入した背景には、生徒対象に行っている学校生活アンケートの結果があります。

  • 「地域や社会をよくするために自分たちにできることがあると思う」
  • 「将来の夢や目標を持っている」

この二つの項目が、府内でも特に低かったことが先生方が気になった点でした。
比較的地元が好きな生徒が多い中、この二項目が低いことに疑問を感じ、探究をそこに直結させることが出来るのではないか、と考えました。
そして、「地域とのつながり」「将来への見通し」を育てることが探究の役割であると捉え、活動をスタートされました。


藤田先生ご自身は、探究の最終目的を「社会に参画できる力(自分が社会の一員であるという感覚)を育てることだと考えています。
ただ、そこにいくまでには段階があるそうです。

まず、社会とつながる前に必要なのは「学校づくりに参画すること」だといいます。
学校生活の多くを受け身で過ごしていると、探究のような自分から動く学びは成立しません。だからこそ、生徒自身が「こうしたい」と声を上げ、学校づくりを自分ごとをとらえ、自分たちで変えていってほしいとおっしゃいます。

そして、その土台になるのが 自分のことを自分で決める力 です。
一方的に教える授業や先生がプリントを配り、「やっといてね」と言うだけでは主体性は育ちません。
「自分は何がしたいのか」「なぜそれをやるのか」を自分で考えて選び行動することが、将来につながる大事なプロセスだと語られていました。

藤田先生ご自身も、高専時代に終電まで作業した経験や、卒論を必死に仕上げた記憶は強く残っていると話します。
「それは、自分でやることを決めたからこそ、今でも覚えているんだと思います」と振り返られていました。

■ 大変なことと、それを乗り越えるモチベーション

教員内の探究の中心チームは6名ほどですが、実際には学習に全教職員が関わっています。
最大の課題は、ビジョンの共有だといいます。

探究における教員の役割は「教える」よりも「伴走する」こと。
そのため、生徒が困ったときに次につながる行動や地域とのつながりを提案できるか・生徒の主体性を尊重しながら支援できるかといった教員のスタンスが成果に大きく影響します。

しかし、探究は自由度が高いからこそ、苦手意識を持つ教員も多いそうです。

(藤田先生)「探究活動は、生徒が困ること、失敗することが大切です。でも、先生自身は失敗させたくないと思ってしまい、『じゃあどうしよう』『どう工夫しよう』が出てこないのに、答えを渡そうとしてしまう。その壁を越えるのが難しいですね」と言います。

また、モチベーションの一つは外部評価 だといいます。
生徒たちが外部に褒められる機会が数多くはないからこそ、
地域の方や発表会で「すごいね」と言っていただくことが励みになると話されていました。

■ やりがい

藤田先生が最もやりがいを感じる瞬間は、子どもたちの発想が自分の予想を超え「120点」を出してくる瞬間 だといいます。

例えば今年度の探究学習では、普段は物静かな男子生徒が「洋楽を広めたい」というテーマを掲げ、
毎日のお昼に洋楽を流したり、発表でもスピーカーを持参して曲を流したりと、自分の好きを全力で届ける姿を見せたそうです。

「こういう姿を見ると、探究をやってよかったと心から思います。きっと高校へ行っても、この経験を思い出すと思うんです」とおっしゃっていました。

■ 探究を通じて育てたい力

探究を通じて生徒に身につけてほしい力は、目的と変わらず、
「社会に関わる力」-「学校に自分から関わる姿勢」-「自分のことを自分で決める経験」だそうです。

テーマを広めたいなら、周りを巻き込む必要があります。
そのためには、自分が思っている「面白い」を伝えるだけでなく、相手の立場や気持ちを考える視点も必要になります。

そうした過程を通して、どんどん枠を広げ、その枠が広がることで影響・やりがいも広がるという成長サイクルを体験してほしいと考えられています。

■ 「理想の探究」の姿

藤田先生が描く理想の探究とは
職業体験と探究がつながっている状態

現状、職業体験受け入れ先を学校側が用意していますが、
理想は、

  • 生徒が自分で行きたい場所を選ぶ
  • 自分で依頼し、交渉し、体験につなげる
  • その体験が探究テーマとつながり、キャリア形成へ発展する

という姿だと話してくださいました。

「趣味と仕事は違う、とよく言われますが、一度やってみないと本当の意味でやりがいは気づけませんからね」と、探究の先に広がる未来を見据えていました。

■ 今後の展望

藤田先生が今後めざしているのは、「自分がいなくても探究が回る環境をつくること」です。
現実的な問題として、教職員には転勤があるため、同じ学校に長く留まって探究を継続的に見続けることはできません。
だからこそ、誰もが、学校全体で探究が自走できる状態をつくることが必要だと語りました。

■インタビューの感想

お話を通して特に共感したのは、「自分で自分のことを決める経験の大切さ」です。私自身、進学や大学に入って(一人暮らしを始めて)から意思決定の場面が一気に増えました。当時は気づきませんでしたが、それまでは大切な意思決定を周りに頼っていましたし、今でも周りの意見を聞かないで自分一人で大きな意思決定を行うときは少しためらいがあります。もっと学校の中でその練習ができていれば、迷いや負担も少なかったのではと感じました。

また、探究の課題が生徒ではなく教員側のビジョン共有にあるという視点は新鮮でした。生徒の挑戦を支えるには、教えるとは違う伴走の姿勢が必要で、先生方のコミュニケーションが探究の質を大きく左右することに気づかされたインタビューでした

学校概要|泉南市立泉南中学校

住所:大阪府泉南市樽井2丁目9-1
TEL:072-483-2475
HP:https://sennan-sennan.jp/

泉南市立泉南中学校外観

CONTACT

お気軽に、お問い合わせください。