【社労士が語る働きがい創造実例③】勤務間インターバル制度導入で健康増進とワークライフバランス向上

「勤務間インターバル」という言葉をご存知でしょうか。勤務間インターバル制度は、勤務終了後の休息時間を確保する制度のことです。勤務と勤務の間にインターバルがあることで、生活時間や睡眠時間を確保でき健康を維持できると今、関心が高まっています。

今回は、勤務間インターバル制度を導入して社員の健康を増進し、長時間勤務削減にもつながった住宅メーカー様の実例をご紹介します。

勤務間インターバル制度とは?

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設ける制度のことです。一定の休息時間を確保することで、働く人が十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、ワークライフバランスを保ちながら健康に働き続けることができると考えられます。

引用:厚生労働省

勤務間インターバル制度導入前の課題

深夜まで続く打ち合わせによる健康への影響と離職率の高さが悩み

住宅メーカーのC社は恒常的に離職者が多い会社でした。営業や設計を担当する社員はお客様と打ち合わせを行う必要があるのですが、打合せ時間はお客様が帰宅する夜になることも多く、夜の9時から打合せが始まり気づけば深夜に…というケースも珍しくありません。

深夜12時を過ぎてから帰宅し、始業開始時刻の朝9時に間に合わせるために朝7時頃に家を出る…といった生活をしている従業員が散見され、健康への影響が懸念されていました。

また、このようなスタイルの仕事がハードで退職者も多いため、人材が育たないといったことも会社の悩みでした。

そこで、従業員の就業環境整備と健康確保のため、勤務間インターバル制度の導入を提案しました。

勤務間インターバル制度の内容を検討し、導入

C社に勤務間インターバル制度を提案したところ「早速導入したい」とのことでしたので、具体的に次の手順で進めました。

①適用対象者

まず検討したことは「誰を対象者にするか?」。勤務間インターバル制度を導入する目的は「従業員の健康維持・向上」のため、パートタイマーも含め全ての従業員を対象にすることになりました。

②インターバル時間数の設定

そして次に検討することは「インターバル時間を何時間にするか?」ということ。1日に必要だと言われている6時間以上の睡眠時間に加えて、往復の通勤時間+食事時間+入浴時間+その他家族とのコミュニケーション時間を考慮し、インターバル時間は11時間で設定しました。

③翌日の始業時刻を超える場合の取り扱い

当日の勤務終了時刻が遅くなりインターバル時間が確保できない場合は、翌日の始業時刻を遅らせることとし、その分終業時刻も遅らせる取り扱いとしました。

④就業規則の改訂と周知

全ての従業員が勤務間インターバル制度の存在と内容を把握できるよう就業規則に規定し、周知するために朝礼と定例会議で通知を行いました。特に上司に対しては、インターバル時間の確保を念頭においた業務指示を行ってもらう必要があるため、丁寧に説明しました。

⑤インターバル時間を確保しやすい環境づくり

勤務間インターバル制度を作っても運用できなければ意味がありません。

お客様とのアポイントの取り方と業務手順の変更等について社内でルールを作り、周知することで、インターバル時間の確保ができる環境整備を行いました。

勤務間インターバル制度 導入後の効果

勤務間インターバル制度で気をつけなければいけないことは、翌日の所定労働時間を後ろにずらした際に、またその翌日も所定労働時間を繰り下げなければならなくなり、いつまでも正常の所定労働時間に戻せなくなってしまう…といった状態になることです。

そのような状態にならないように上司が声掛けを行ったり、その日の業務を軽減させる等の対応をしてもらうことにしました。

勤務間インターバル導入により一人ひとりの時間意識が向上

会社が勤務間インターバル制度を設け「11時間未満のインターバルでの勤務禁止」といった制限によって、一人ひとり仕事の仕方を見直すきっかけにもなったようです。

最初は半ば無理にでもインターバルを設けることで、「どうすればインターバルを確保しながら働くことができるか?」を一人ひとりが考えながら仕事をする風土ができます。

C社では一人ひとりの時間意識が高まり、時間外労働削減、そして離職者低下にもつながりました。

まとめ

C社では、これまで従業員が自己裁量でお客様との打ち合わせ時間を設定していたため、労働時間が長くなりすぎて体調を崩し、結果的に退職につながるという負のスパイラルを引き起こしていました。

勤務間インターバル制度の導入により、時間外労働の削減につながりましたが、何より離職する人が減ったということは、魅力のある職場環境づくりが実現できたと言えるのではないでしょうか。

この記事を書いたのは…

社会保険労務士法人さくら労務コンサルティング 代表社会保険労務士
岩 井 真 規

医療業界、建設業、飲食業、小売業、美容業など幅広い業界に精通し、会社顧問として人事労務について指導を行う一方、個人年金の相談業務や手続も行う。得意分野は就業規則の作成等労務管理についてのコンサルティング。幅広い知識と経験に基づき各種団体のセミナー講師経験多数。

所属
大阪府社会保険労務士会 (平成15年9月登録)

経歴
淀川労働基準監督署 臨時労働保険相談員・通勤災害調査員
公共職業訓練校 社会保険実務 講師
大原法律簿記専門学校、LEC社会人セミナー 講師
全国社会保険労務士会連合会 事務指定講習 講師
近畿税理士会他各種団体、民間企業セミナーにおける講師経験多数

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