【働きがい創造企業に学生がインタビュー#17】株式会社ナリス コスメティック フロンティア様の障害者雇用

こんにちは!学生インタビュアーの原田です。今回は、株式会社ナリス コスメティック フロンティア様にインタビューを行いました。

■ナリス コスメティック フロンティアとは?

ナリス コスメティック フロンティア様は株式会社ナリス化粧品の特例子会社です。
2006年10月に26名(障害者11名)で操業を開始しました。業務内容は化粧品、医薬部外品の製造・充填・包装です。
設立の背景には経営者と社員の思いがあります。

①経営者の思い
「障害者の方に化粧品作りを通して就労の機会を増やし、お金を稼いで自立した生活を送ってほしい。」

②社員の思い
「ナリス化粧品 企業理念 『for others 人様のために』を具現化したい」

この2つの思いをもとに、操業が開始されました。

■今回インタビューを行った方

今回インタビューを受けてくださったのは、工場長山下勝也様・生産課の松村秀雄様です。

山下様
「ナリス化粧品に入社後、営業職や商品企画など、生産から販売までの一通りの業務を経験してきました。ナリス化粧品が大好きで、正直な経営を実践していること、品質にこだわり、人を大切にする姿勢があるからこそ、90年近く続けてこられたと感じています。

今年から工場長に就任し、非常にやりがいのある仕事をしています。障害者の方が働く姿勢に感銘を受けることが多く、一生懸命働く姿を目の当たりにしながら、何とか働きやすい環境を整えたいという気持ちが強くなっています。この環境で障害者の方と一緒に働く機会をいただけたことにも、大変誇りを感じています。」

工場長 山下様

松村様
「私はナリス化粧品に入社後、現場で化粧品の生産に携わり、現在はマネージャー職として勤務しています。多様な人材がいることで、人々に喜びを提供する商品を作れると考えており、マネージャー職にはやりがいを感じています。

フロンティアでは、個性豊かな障害者の方々が働いています。障害者の方と接するのは初めてでしたが、どのようなフォローをすれば良いかを考えているうちに、健常者と特に大きな違いはないという気付きがありました。そのため、障害の有無に関わらず、同じように接することを心掛けています。」

生産課 松村様

■化粧品づくりの工程

今回のインタビューでは、化粧品作りの工程である充填室と包装室を見学させていただきました。一つの商品が完成するまでには、以下の4つの工程が行われます。

1. 容器のエア洗浄
2.充填
3.仮締め
4.点検

工程の1~3は充填室で、4は包装室で行われます。

充填室での業務内容

充填室では商品の中身に触れるため、館内の空調は気圧の高い空気に保つことで清浄度を維持しています。また、3名の聴覚障害者の方々が手話で会話しながら働かれていました。

1.エア洗浄    :清潔な商品を届けるため、ボトルは一度洗浄

2.充填      :充填機を用いて、設定されたペースで決められた量の液体を充填

3.仮締め     :液体が入ったボトルは、人の手で仮締めした後に自動キャッパーを使用してキャップを締める

エア洗浄と充填機
仮締めの様子

包装室での業務内容

充填室で作られた製品をこちらの包装室で仕上げます。ここでは、製品のロット記号が印字されているか確認し、包装作業が行われていました。

1.重量検査     : 機械を使って製品の重量が規格内に入っているか検査

2.ロット記号確認  : 作業者がロット記号が正しく印字されているかを再確認

3.シュリンク包装  : 検査が完了したら、製品は機械によって包装

4.梱包       : 最後に、作業員が完成した製品を段ボールに詰める

これらの作業はすべて、障害者の方と健常者の方が共に行っています障害者の方も健常者の方も同じように作業し、一つの製品を一つのラインで共に作り上げていくことが、ナリス化粧品の一番の特徴です。

手前側が充填室 奥側が包装室

■障害者の方への配慮

ナリスコスメティックフロンティア様では情報の文字化・動画化に取り組んでいます。
目的は障害の有無関係なく全員が同じ認識で製造を行うためです。
導入以前は口頭で商品情報や手順を説明していたため、特に聴覚障害を持つ方への情報伝達ミスが度々発生していました。

情報の文字化


コンピュータで生産品目を検索することで、製品を作る際の注意点や製品情報を閲覧できるようになります。以前は、ラベルの貼り位置などの基準を口頭で伝えていましたが、障害者の方々には「忘れてしまう」や「一度で理解できない」という課題がありました。そこで、視覚化や文字化を行うことで、障害者の方々の仕事の数や幅が広がりました。

動画化


製品の作り方を動画として作成し、いつでも閲覧できる状態にしています。実際の作業を視覚的に見ることで、手の動きや製品の扱い方を学ぶことができ、ミスや誤認識を防ぐことができるようになりました。

作業の様子

■障害者の方への支援

ナリスコスメティックフロンティア様は、就労支援と定着支援に熱心に取り組まれています。それぞれの取り組みについて山下様に教えて頂きました。

山下様
「私たちは、就労支援において安全面と衛生面の配慮を重視しています。


安全面の配慮としては、聴覚障害者の方々に向けて設備異常告知ランプを設置しています。
衛生面の配慮としては、車椅子洗浄機の導入を行っています。この他にも、正社員採用や親会社と同様の人事規定を採用するなど、働きやすさを向上させるためのさまざまな施策を実施しています。


定着支援においては、障害者の特性に応じた業務を任せることを意識しています。例えば、聴覚障害者の方には集中力を活かして少人数業務を、知的障害者の方には持続力を活かして反復継続業務を担当していただくなど、柔軟に活躍できる場を提供しています。」

■障害者の方への接し方

松村様には障害者の方との接し方に工夫があるそうです。

松村様
「障害者の方に指導を行う際は、退勤前や休日前の金曜日を避け、昼間や月曜日に行うように配慮しています。
心がけていることとして、聴覚障害のある方には伝えたいことを文字化し、定期的に様子を確認するようにしています。また、知的障害のある方に注意をする際は、まず相手の話を聞き、褒める部分を用意することを心掛けています。」

■行動の結果を知ること

ナリスコスメティックフロンティア様で働く障害者の方々の「働きがい」は何でしょうか。工場長の山下様は次のように語ります。

山下様
「職場に自分の居場所がある
という実感が、やりがいにつながっています。また、商品の売上や、商品がどのように人々の幸せに貢献しているかをコミュニケーションを通じて伝えています。こうした行動の結果を知ることが、さらなるやりがいにつながっています。」

誰かに影響を与えることの素晴らしさ

日々、障害のある方と働く松村様には障害者の方と関わる中で感じる「働きがい」についてお伺いしました。

松村様
自分が働き、誰かに影響を与えることは素晴らしいことだと思います。それによって感謝されたり、人が評価されることで、自分の価値が上がる気がします。私のようなマネージャー職の言動によって、障害者の方々が成長していく姿を見ることは、やりがいにつながっています。」

■障害者の方々の幸せを本心で願うことができるか

最後に障害者雇用を広めていくために必要なことをお二人にお伺いしました。

山下様
「障害者雇用を行う企業の多くは、『法定雇用率を達成するため』や『障害者を採用しなければならない』という義務感から雇用を行っていると感じます。しかし、ナリスコスメティックフロンティアはそうではなく、障害者の方々が学び成長し、自立できることを目指しています。そのため、彼らが働きやすい環境を責任を持って整えることを目標としています。

『障害者の方々の幸せを本心で願うことができるか』

障害者雇用に対する強い想いを持つことが大切だと思います。」

松村様
「会社の存続は非常に重要です。障害者雇用は、障害者を雇用できる会社があってこそ成り立ちます。また、業務の切り出しを積極的に進め、障害者の方が活躍できる場所を作ることも大切だと考えます。」

障害者の方々

■学生インタビュアーの感想

化粧品づくりの工程を見学させていただき、障害のある方々の作業における細やかな技術やチームワークに深い感銘を受けました。環境への配慮も行き届いており、働きやすい環境の整備が進んでいることを実感しました。また、障害者支援に対する支援員や工場長の熱意が強く伝わり、仕事に対する向き合い方について改めて考えさせられる貴重な時間を過ごすことができました。障害のある方々も明るく、企業全体の温かい雰囲気が感じられました。

株式会社ナリス コスメティック フロンティア|会社概要
本社  神戸市東灘区向洋町西5丁目10番4号
TEL   078-846-6616
HP     http://www.naris-frontier.co.jp/

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