【社労士が語る働きがい創造実例⑤】短時間正社員制度の導入で、優秀な人材が働き続けられる企業に

短時間正社員制度とは、フルタイムの正社員と同じように期間の定めのない労働契約を締結しつつ、フルタイム正社員よりも短い労働時間で働くことができる制度のことです。
育児や介護などの理由で長時間働けない人でも、正社員としての待遇で働くことができるため、優秀な人材の確保・離職防止を図るうえで大きな効果が期待できる制度と言えるでしょう。

今回は、短時間正社員制度を導入して、優秀な人材の働きやすさを創造した実例をご紹介いたします。

短時間正社員制度を導入した理由|E株式会社の場合

突然、優秀なパートタイマーYさんからの相談…

E株式会社は、自動車修理業を営む会社です。従業員は10人程度で小規模ながら効率よく業務を行っていますが、電車の最寄駅からは少し離れた場所にあり、求人募集をしても応募者が集まりにくいという悩みがありました。

ある時、求人募集をしたところ、夫と子供2人の4人暮らしのYさんから応募が。
「扶養の範囲で働きたい」という希望でしたので、パートタイマーとして働いていただくことになりました。

Yさんは仕事の理解や業務処理も早く、かつ正確でとても優秀なパートさんです。採用して10か月が経過したころ、「離婚することになり、生活費が必要になるためもっと働きたいです。ただ、幼い子供が2人いるのでフルタイムでは働けないのですが」という相談が。

そこで、E株式会社は短時間正社員制度を導入することにしたのです。

短時間正社員制度導入のメリット

短時間正社員制度を導入することで、制度を受けられる社員はもちろん、企業側にもメリットがあります。

●育児・介護との両立ができる
●多様な働き方への対応が可能となる
●ダイバーシティ推進:障害者や高齢者など、働く時間に制約がある人にも正社員として働きやすい環境を提供できる
●従業員の離職防止:フルタイムで働けなくなった優秀な人材の継続雇用が可能
●生産性の向上:短時間勤務でも正社員としての責任感を持つことで、業務の生産性を高める効果が期待できる

短時間正社員制度の設計

短時間正社員は次の二つを満たす必要があります。

①期間の定めのない労働契約を締結している
②時間当たりの基本給および賞与・退職金等の算定方法等が、同一事業所に雇用されているフルタイムの正社員と同等である

E株式会社では、フルタイム正社員の所定労働時間は1日8時間ですが、短時間正社員の所定労働時間は1日6時間または7時間を選択できるようにしました。
また、給与体系・時間当たりの賃金額・賞与・退職金はいずれも正社員と同等になるよう就業規則・賃金規程を変更しました。

まとめ

E株式会社に短時間正社員制度が導入されていなければ、安定した仕事と収入が必要となったYさんは退職していたかもしれません。そうなると人材不足で業務に支障が出ていたでしょう。
一方Yさんもフルタイムでは働けないという状態で、他の会社で条件の合う求人は容易に見つけられなかったかもしれません。

今、Yさんは短時間正社員として、これまで以上のパフォーマンスを発揮し活躍しています。E株式会社は優秀な人材に働き続けてもらうことができたとともに、シングルマザーの応援にもつながりました。

多様な働き方と持続可能な企業成長につながる環境整備が求められるこの時代で、短時間正社員制度は企業と従業員の双方にメリットをもたらす制度であると言えるでしょう。

この記事を書いたのは…

社会保険労務士法人さくら労務コンサルティング 代表社会保険労務士
岩 井 真 規

医療業界、建設業、飲食業、小売業、美容業など幅広い業界に精通し、会社顧問として人事労務について指導を行う一方、個人年金の相談業務や手続も行う。得意分野は就業規則の作成等労務管理についてのコンサルティング。幅広い知識と経験に基づき各種団体のセミナー講師経験多数。

所属
大阪府社会保険労務士会 (平成15年9月登録)

経歴
淀川労働基準監督署 臨時労働保険相談員・通勤災害調査員
公共職業訓練校 社会保険実務 講師
大原法律簿記専門学校、LEC社会人セミナー 講師
全国社会保険労務士会連合会 事務指定講習 講師
近畿税理士会他各種団体、民間企業セミナーにおける講師経験多数

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