社労士が語る働きがい創造実例⑧選択型週休3日制の導入でプライベートを充実させた働き方が実現

今回は、週休3日制の導入で働きやすさを実現した企業実例をご紹介します。
数年前よりニュースでも取り上げられる「週休3日制」ですが、「大企業にしかできない」「会社側にとってデメリットが多い」と考えている企業様もいらっしゃるのではないでしょうか?今回の実例をぜひ参考にしてくださいね。

「休めない」が課題の衣料品店|H社の実例

衣料品を販売しているH社は、アウトレットモールやサービスエリアを中心に全国に店舗展開をしている企業です。
店舗の多くは最寄り駅から離れていることもあり、求人募集をしてもなかなか人が集まらないという悩みを抱えていました。
また、店舗スタッフからは「人が足りておらず、休めない」「休みが少ない」という声がたびたび聞かれるようになり、さらには休みが少ないことが理由で退職者が出るという状態。

そこで、H社は思い切って週休3日制を導入することに決めました。
アウトレットモールもサービスエリアも公共交通機関では通勤しにくく、私有車など通勤手段が限られている状況。そもそも応募者が少ない上、通勤可能な人材は周囲の店舗と取り合いになります。
求職者も同じ場所に通勤するのであれば、少しでも条件の良いところで働きたいと思うのは当然のことでしょう。

週休3日制にしたら給与は下がる?

ところで週休3日制を選択した場合、給与はどうなるのでしょうか?

H社の所定労働時間は原則として1日8時間で週休2日制のため、1週間の所定労働時間は8時間×5日勤務=週40時間勤務。
「週休3日制は魅力的!」とは言え、日々の生活もあり、給与が下がっては困ります。
店舗スタッフからは、「休みは多く欲しいけれど、もともと残業をしていたこともあり、1日の労働時間は多少長くても構わない」という意見がありました。

そこで、1か月単位の変形労働時間制を適用。週休3日にする場合は1日の所定労働時間を10時間とし、10時間×4日勤務=週40時間勤務という働き方を新たに創設しました。
こうすれば1か月の所定労働時間自体は変わらないため、給与額の変更はありません

さらにスタッフには、週休2日制か週休3日制を選択できることとしました。求人募集においても、休日数を選択できるというインパクトのある求人広告を打ち出すことができ、競合していた周囲の店舗と差別化を図ることができたのです。

週休3日制の課題点も

週休3日制は、多様な人材を採用することができ定着率が向上する魅力的な制度である一方、シフト管理が複雑化するという問題が発生します。
週休3日制を選択したスタッフが多い店舗では、シフトが埋められないという問題が。派遣社員やアルバイトを雇用しなければならないケースも発生しました。

「人材不足を解消するために導入した制度にも関わらず人材不足が発生するのであれば意味がない」と思われるかもしれませんが、だからと言って何も対策しないままだと、人材不足は加速するばかりです。

いずれにしてもコストがかかるのであれば、常にスタッフが疲弊している状態で求人募集や新規雇用者の教育にコストをかけ続けるより、スタッフのワークライフバランスの改善やストレスの軽減を実現させながら従業員満足度を向上させる方が建設的と言えるのではないでしょうか。

週休3日制の導入は生産性の向上に

近年、ユニクロやリクルートなど、週休3日制を導入する企業も増えています。ただ、1店舗の人員の少ない中小企業の会社や店舗では、シフト管理をうまく行うことができるかどうかが鍵となりそうです。
他にも、年間の所定労働日数が少なくなることから年次有給休暇の取得対象にできる日が少なくなるなど、導入時には注意が必要な事項もあります。

しかし、週休3日制を導入することで、様々なライフステージにおいて従業員が働き続けることができ、離職率の低下が期待できます。

実際にH社で週休3日制を選択したスタッフからは…
「子どもと一日過ごせる日が増えた!」
「働く日は働く日、休日は休日と切り替えをすることで、仕事にメリハリが出た。」
「まとまった余暇時間が増えたため、資格試験の勉強を始めようと思う。」
「旅行を計画しやすくなった。」
などという声が上がっています。

週休3日制を導入したことによって、働く日数が少なくなり効率的な働き方を従業員自身が考える傾向が見受けられました。
週休3日制は社員の働きやすさだけでなく、生産性向上にもつながっていることは企業にとってメリットと言えるでしょう。

この記事を書いたのは…

社会保険労務士法人さくら労務コンサルティング 代表社会保険労務士
岩 井 真 規

医療業界、建設業、飲食業、小売業、美容業など幅広い業界に精通し、会社顧問として人事労務について指導を行う一方、個人年金の相談業務や手続も行う。得意分野は就業規則の作成等労務管理についてのコンサルティング。幅広い知識と経験に基づき各種団体のセミナー講師経験多数。

所属
大阪府社会保険労務士会 (平成15年9月登録)

経歴
淀川労働基準監督署 臨時労働保険相談員・通勤災害調査員
公共職業訓練校 社会保険実務 講師
大原法律簿記専門学校、LEC社会人セミナー 講師
全国社会保険労務士会連合会 事務指定講習 講師
近畿税理士会他各種団体、民間企業セミナーにおける講師経験多数

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