こんにちは!Pleasure Support株式会社 学生スタッフの赤星と申します。
この度、小津中学校にて探究学習を担当されている 大達 雄 先生 にお話を伺いました。
本記事を通して、高校における探究・課題研究のリアルや、その背景にある先生の想いを感じていただければ幸いです。

■ 現在どのような探究活動を担当されていますか?
小津中学校では、「生徒が創る学校」という考え方を学校全体の軸に据えており、探究的な学習はその中心的な取り組みの一つとして位置づけられています。
大達先生は、その中でも授業として行われている生徒主体のプロジェクト型学習「共創プロジェクト」をサポートされています。
この「生徒が創る学校」という考え方は、単に行事の企画を生徒に任せるといったものではありません。学校の在り方そのものに生徒が関わることを意味しており、授業の進め方や行事の方向性、校則の見直しなど、学校運営全体に関わる考え方です。

象徴的なのが、「学校のコンパス」と呼ばれる学校方針です。
このコンパスは、生徒が中心となって話し合い、言葉を選び、形にしてきたもので、生徒が守るだけのものではありません。
先生や保護者も含めて、本気で一から学校を作り直していく際の、学校全体の判断基準として活用されています。
共創プロジェクトでは、生徒が自分の「やりたいこと」「気になっていること」を起点に企画を立ち上げ、仲間を集め、実際に行動していきます。
先生は指示を出す立場ではなく、あくまで生徒の活動を横で支える存在として関わっています。
■ この探究はどのような生徒が対象ですか?
共創プロジェクトの対象は、小津中学校に在籍する全学年の生徒です。
学年を限定せず、1年生から3年生までが同じ土俵で参加しています。
学年混合でプロジェクトを進めることを前提としているため、年齢や経験の差がそのまま上下関係になることはありません。
それぞれの得意や関心が役割につながる構成になっています。
今年度は、全体で63のプロジェクトが同時に動いており、1つのプロジェクトは8人前後の少人数で構成されています。
過去には人数制限を設けずに募集した結果、数十人規模のプロジェクトが生まれ、「生徒一人ひとりが当事者意識を持ちにくくなる」状況が生まれたこともあったそうです。
そうした経験から、各プロジェクトが現在の規模感に落ち着いています。
プロジェクトを立ち上げた生徒がリーダーとなり、その他の生徒は、希望する各プロジェクトへの参加にあたって、各プロジェクトの説明ブースを回った上で、履歴書のような志望理由を書き、エントリーします。
1年生がプロジェクトリーダーを務めるケースも多く、3年生が必ずしも上に立つわけではない点も特徴です。

■ 探究授業の目的・意義をどのように捉えていますか?
小津中学校は探究的な学習の目的もまた、学校のコンパスに示されている
「自芯を持つ」「認め合う」「やわらかさで0から1をつくる」という力を育てることだと捉えています。
その上で、大達先生ご自身が特に大切にしているのは、
「あなたにしかできないようなことへの手応え」
を、どう育てていくかという視点です。
好きなことや、やりたいことの原点を突き詰めていきながら、自分なりのキャリアを模索していく。
その過程を支えるのが探究だと語ります。
AIの進展などにより、誰にでもできる仕事や作業が増えていく時代においては、
「何をやりたいか」「なぜそれをやるのか」を自分の言葉で語れることが重要になります。
探究的な学びは、知識を身につけることそのものよりも、自分の関心や問いを深め、自分なりの軸を持つことにつながる学びだと位置づけられています。
■ 課題を感じた場面
探究を進める中で直面してきた困難は、一つの大きな壁というよりも、小さな試行錯誤の積み重ねだったと大達先生は振り返ります。
その一つとして生徒が「そこそこで満足してしまう」状態に留まってしまうことです。
その背景には、先生から十分な問いが投げかけられていないケースも考えられるとのこと。
「そもそもこの活動は何のためにやってるんだろう?」
「この取り組みで幸せになるのは誰なんだろう?」
「どんな人の力を借りたらこの取り組みがより良くなるだろう?」
といった問いを、活動のフェーズに応じて投げかけることで、学びは一段深まります。しかし、その問いの質やタイミングは、一斉授業のように用意できるものではありません。
だからこそ、一人ひとりの状況を見ながら、どんな問いを投げるのか、どこまで任せ、どこで支えるのか。
大達先生は、一人ひとりに対する関わり方を模索し続けていると語っていました。
一方で、先生の関わり方には経験などにより差が出てしまうという課題もあるそうです。
横から適切に問いを投げられることもあれば、気づけばほったらかしになってしまうケースもある。
先生たちが自分たちの価値観をアップデートさせてり、スキルアップすることも含めて、その差をどう埋めていくかは、現在も模索を続けている部分だそうです。
その実現に向けて、小津中学校では、先生同士の関係性や意思決定のあり方にも工夫を重ねています。
フリーアドレスの職員室や、Slackを活用したコミュニケーション、定例の職員会議を廃止し、ワークショップ型の対話に切り替えるなど、
教員同士が柔軟に話し合い、意思決定できる環境づくりにも力を入れています。

■ やりがい
大達先生が感じているやりがいは、一つではありません。
生徒が変わっていくこと、学校が変わっていくこと、先生自身が変わっていくこと。
職場全体が少しずつ変化していくことそのものに、やりがいを感じています。
また、私生活では、高校3年生の娘さんと中学2年生の息子さんを持つ親として、
日本の学校が時代に合わせてどう変化していくのかにも関心が向いているといいます。
そんな視点も、探究に向き合い続けるモチベーションになっています。
■ 現在の探究授業で、生徒が特に成長していると感じる場面
生徒の成長を最も強く感じるのは、考える力や発信する力が変わったときだそうです。
これまでは、その力が「証明される場所」があまりなかったとのことですが、
実際に、令和6年度の中学生の主張大阪府大会では、小津中学校の生徒が
それぞれの学校約1500人の代表の中から、大阪府全体の1位・2位・4位を獲得し、翌年も同様の成果を残しています。
自分の意見を持ち、その背景や理由を含めて説明できるようになることで、
発言に大きな自信が表れてきているそうです。
■ 「理想の探究」の姿
大達先生が描く理想の探究の姿は、決して派手な成果や完成形が明確あるものではありません。
それは、「一つひとつ課題をこなしていくこと」、そして「その課題を絶やさないこと」だといいます。探究は、何か一度うまくいったら終わり、完成したら成功というものではありません。
目の前の課題に向き合い、考え、行動し、また次の課題に出会う。その繰り返しの中にこそ、探究の本質があると大達先生は考えています。
(大達先生)「そのサイクルが止まった時が、終わりだと思っています」
■ 今後の展望
今年度は、学校全体としても大きな変化がありました。
先生側では「チーム担任制」を導入し、一人一クラスの担任制を廃止しました。
生徒側では、生徒会をイチから作り直しています。

こうした取り組みを通じて、現在抱えている課題を一つひとつ改善しながら、
より「みんなで学校をつくっていく」状態を目指していきたいと考えています。
インタビューの感想
今回のインタビューを通して、特に印象に残ったのは、大達先生をはじめとする先生方の「生徒に対する受け入れの姿勢」の大きさでした。
生徒がやりたいことや目指したい姿を起点に、学びの形だけでなく、学校のルールや教員側の在り方まで柔軟に変えていく。そのスタンスは、探究を「授業の一部」ではなく、「学校文化そのもの」として捉えているからこそ生まれているものだと感じました。
一方で、中学校段階でここまで生徒主体の環境を経験したからこそ、その後に進学した先の学校が「そうではない環境」だった場合、大きなギャップを感じてしまう可能性もあると感じました。
主体的に考え、動くことが当たり前だった生徒が、高校で再び受け身の学びに戻されたとき、「自分は何のために学んでいるのか」「なぜ学校に行くのか」と希望を持ちづらくなることもあるかもしれません。
だからこそ、小津中学校で育まれている探究の価値観や経験が、中学校だけで完結するものではなく、その先の学びや進路につながっていくような連続性が、今後ますます重要になると感じたインタビューでした。
学校概要|泉大津市立小津中学校
住所:大阪府泉大津市助松町2-13-1
TEL:0725-22-6501
HP:泉大津市立小津中学校 | 学校日記



